トキ、放鳥

本当に飛ぶと思っている人は、どれだけいたのか。

正直なところ、トキはあれで、害鳥の類だ。しかしそうした鳥がいない環境がまともと言えるかというと、そうでもない。害の多寡は問題ではなく、それこそが自然なのだと思える精神。それは安易な動物保護のではなく、こうして放鳥にこぎ着けるまでの現実的な妥協と取捨選択の精神だった。

例えば中国の協力が無ければ、実現しようがなかった。パンダみたく、いなくなったからくれなどという精神が、外国の心を動かすわけもない。あのときは中国の横柄さを叩く風潮があったが、信じ難い。日本は恥の文化などと偉そうに言って、恥を忘れたときの醜さを知らないのか。

何はともあれ、お世辞にも綺麗とはいえない身なりのトキが、飛んだ。分配も進んでいく予定だ。企業団体のトキを巡る環境活動も活発化している。これこそが精神の飛躍だったと言えるだけの努力を、今からでもしなければならない。