北越雪譜

北越雪譜―現代語訳

北越雪譜―現代語訳

近頃、暇を見付けては北越雪譜を読み直している。北越と付くものでは北越奇談と並ぶものだが、それと違う点として、良書が少ない。ただ読む文には岩波書店からいくつか出ているもので良いとはいえ、元のものの素晴らしさを知っていると余計に、それでは勿体なく思う。手を入れろと言うのではない。読まれるものには読まれるだけの誂えをすべきだ。

今回は高田図書館に野島出版(三条市)からの現代語訳が置いてあったので、それを借りた。訳といっても単に送りがなや註を入れているだけで、単語などはほぼそのままになっている。意訳もあるが、それは試みの範疇であると感じられる程度。非常に読みやすく、図絵のサイズ、装丁共にとても良くされている。現在出回っているものではこれが最たるものだろうと思う。良書は人の手に触れるものらしく、染みや折れが目立ち、状態はかなり悪くなっているが、図書館で借りるものはむしろこれくらいの方が私は人情を感じられて好きだったりする。そもそも図書館でないと手に取れない本だろう。

さて、読み直してもやはり目を引くのは秋山郷に関することだが、新鮮さでは鮭に関する記述だ。生態から捕り方、縁起、藩へ献上する際などに付ける等級、果ては鮭の字についてと、昔読んだときにはよくわからなかったことが、興味深く読めた。こうした産物に関する縦横の出来事を今に俯瞰できるのは、ダイナミックさを覚える。

もし北越雪譜に興味を持たれている方がいるなら、今に述べたような本もあるのだというつもりで、探してもらいたい。読みづらいからと諦めるには勿体ない内容であるから。