同窓三国志

直江津工業の後期の学生は愉快な人が多いというのはたまに聞くのだけれど、当時を経験した一人として、一例を挙げたいと思う。

この頃の私についてはたまに書かせてもらっているが、この時期は横山光輝三国志の文庫版刊行と重なっていて、中学の頃から世話になっていたM氏や岳飛氏の歴史サークルの影響から、一応は三国志に興味を持っていたものの、そこは特に優秀でもない学生だったから、入り口が必要だった。

三国志 1 (潮漫画文庫)

三国志 1 (潮漫画文庫)

そんなわけで、一月に二刊ずつ、といったようなペースで、全三十巻、十五ヶ月かけて、文庫版全巻を揃えた。柴田錬三郎三国志などを知るのは、もっと後のこと。そもそもこの頃に柴田作品や坂口安吾に触れていて、色々な出会いがあった。面白いのは、それらについては全く予備知識が無い状態でたまたま手に取ったということだけれど、今回の主題からはずれるので、省く。

さて、その三国志文庫版なのだけれど、ほとんどを学校に持ち込んでいた。何せ学校のすぐ近くに大型書店があったし、私はアニメ研究部(事実上の漫研)や生徒会に入り浸りだったから、置く場所はいくらでもあった。

ところで面白いのは、クラス中でこの三国志文庫版を回し読みしていたことだろう。地方の工業高校なんて、まあ昔みたいなステレオタイプの不良はいないにしても、一癖も二癖もある学生が多い。それが殊、漫画のこととなると、とても大事に扱ってくれた。私もあまり本の状態に頓着しない方だったから、気にせずに貸していた。この内の一つも、汚れや欠損が、ついぞ無かった。

この頃の私の興味は専ら勉強や歴史サークルでのチャット、漫画や生徒会といった学校での活動だったので、個人で熱心に中国古典を調べるようになるのは、社会人になってからになる。ただ、あの教室でワイワイとやっていた感覚が、好ましいものを私の中に残したのは確かだと思う。

愛蔵版などの刊行がされていることを知った昨今、触れておいた。

三国志 1 (愛蔵版)

三国志 1 (愛蔵版)