宮城谷昌光『三国志』文庫版・第三、第四巻

三国志 第三巻 (文春文庫)

三国志 第三巻 (文春文庫)

三国志 第四巻 (文春文庫)

三国志 第四巻 (文春文庫)

読了。

李カク[にんべんにふるとり]と郭艴に関わる部分が第四巻においてはよく書かれることになるが、殊に朱儁の末路については、皇甫嵩のものと加えて、秋風が凍みる。小説という形態が史料に投げかける疑問は、多い。それが果たして有為か無為かは、また別の話だろう。

第三巻と第四巻を踏まえた上で、第一巻と第二巻を顧みると、何をもってこの作品が面白いと思わせるのかが、見えてくる。それは別に、事細かに官吏の挙止を追っているからとか、そういうことではなくて、そうした部分の丹念さによって浮き出てくる、人間味の染みなのだろう、と、思う。曹操の苦慮を追っている間に、作者の影を感じる。こうしたことを他の題材で出来たかといえば、長短の点だけで言っても、宮城谷氏の作風から言っても、難しかったろう。

続きを読めば読んだだけ、宮城谷作品についての考えが改められ、深まるように思う。毎年十月に二巻ずつ続刊予定とのことなので、じっくりと構えたい。