ろくでなしどもが夢のあと

mixiをぶらぶらっと巡回したら、何やら歴史小説の話題で盛り上がっていた。それがかれこれ一週間以上前のこと。

私は元々、史料はよく読むけれど小説はあまり読まない口で、学生時代に図書館で文学集を読み漁っていた程度。その代わり坂口安吾などには妙にハマる。

この度に思い出したのも安吾のもので、黒田如水(官兵衛)を描いた「二流の人」だった。なお安吾はこの作品でほとんど触れられない信長についての作品もあるが、そちらについては割愛する。

最初に如水がどのように描かれるかというと、カサ頭やチンバ、百歩譲っても世辞ではない。

話の筋としては戦国における巨人・秀吉の恐れについて掘り下げながら、如水や秀次との奇妙な関係、そして太閤死後の関ヶ原。ついには如水に立ち返る。

古典の類なので細かいことを言うのは学のある方々に任せるとして、如水の扱われ方についてだけ触れておきたい。

如水は最後、関ヶ原のどさくさにかこつけて九州討伐をし、家康と恩賞について話すことになる。もちろん如水は天下が欲しかった。家康の禄などではない。しかし、嗣子の長政が大層なものを貰っているからいらないと誤魔化して終わる。

実に淡泊だが、ここで安吾はぴしゃりとやる。戦国という茶番が終わったと同時に、如水の一生も終わったようなものなのだった。安吾作品の大体がそうであるように、虚無へと立ち返ることになる。

安吾作品が暗い雰囲気であると同時に妙な痛快さを持っているのは、こうした登場人物への鋭い指摘にあると思う。誤魔化しようのない有様を浮かび上がらせる。あの白痴においては、白痴の女、空襲、敗戦と、実によく表れている。

白痴・二流の人 (角川文庫)

白痴・二流の人 (角川文庫)