おかげで腹が丈夫に育ったけれど

四十九日も過ぎているので、少し書いておく。

昔、実家の向かいの家の御祖父さんが、石焼き芋屋だった。豆腐屋や竿竹屋みたいにサイレンをプーパーと鳴らして、荷台に炉を積んだ車で売りに行く。家の窓を開けていると、煙突から立ち上る煙の臭いで、売り出し時がわかったりもした。私も自分の祖父や祖母だけでなく母に頼まれて、よく買いに行った。「初めてのおつかい」なんていうやつも、それだった。道路を一つ隔てただけの場所だった。

仔細は省くが、その家に住んでいた幼馴染の女性が亡くなった。せめてもの救いは、石焼き芋を食べる度に、楽しかった頃のことを思い出せることだろうか。

その石焼き芋の車を、御祖父さんは今も走らせている。他のご家族のことも気がかりだったが、母から聞く限りでは心配し過ぎてもいけないぐらいの元気さはあるという。

私は哀しみが深いだけの小人でしかない。