どんな煙も気になるものよ

煙草を止めて一年以上が経った。その間に世間では色々あったが、どうしても気になるのが、何故に「JTはいらない」論が高ぶらないのか、ということ。いや、別にこればかりをあげつらうのもどうかと思うのだけれど、禁煙ブームの勢いと比べて、あまりにも振るわない。

若い人の中にはJTには専売公社と呼ばれていた時代があったこともわからない方ばかりなのだが、実態はその頃と変わっていない、というのが年配の方から聞いた意見である。あまり鵜呑みにするのも危ういが、JT自体は話題にされ辛い一方、規模だけは恐ろしく大きい。週刊誌も昔はいざ知らず、JRを叩いてもJTは叩かない。どころか、JTのマークが入った大きな広告が一ページを埋めていたりする。

一応、重ねて言うけれど、JTのことだけをあげつらう気はない。関係した場所や扱っている商店で働いている方を蔑むつもりもない。どこかに入念な取材をしている方などがいれば、是非とも拝読したいと思うので、頑張ってほしい、というのが趣旨だ。根拠も無く名指しで批判するような輩を助長しようという考えはない。

また、禁煙ブームの一方で、煙草の銘柄が大幅に偏りつつある。同じ銘柄のメンソールだの細巻きだの、そういうのばかりが増えた。名前は同じでも中身は別物(キャメルなど)も目に付く。この十年間は私のような若輩でも自販機の中身がめまぐるしく変わるのを実感できたわけで、その責任者であり元締めでもあるのは、JTである。留意したい。

参考として、煙草の銘柄を一覧できるサイトを運営しているショップを見付けたので、トップページにリンクをしておく。カタログコンテンツから、廃止された煙草も一覧できる。小難しいこと抜きにしていても、興味があるなら見ているだけで楽しい。

リビングショップ安藤HP

さて、あまりこういう話ばかりをして得意になるのは控えたいので、もっと個人的なことにも触れて、濁しておく。

私はたしかピースライトかマイルドセブンから吸い始めたと思うのだが、一番美味かったのは、三年間吸っていたMOREで間違いない。正直、これがまだ廃止されていなければ、高い金を出してでも吸っていた可能性は十分にある。

火を点けてから煙を吐くまでの響きにおいて、MOREはフィルター煙草としてはほぼ完璧だった。フィルターはそんなに良いものではなかったと記憶しているが、代えがたいものだった。あれが無くなって一年ほどラッキーストライクを吸っていたが、肺の調子を崩したこともあって、本格的に止めた。そのラッキーストライクにしたって、味が落ちていると聞く。

煙草と家族を天秤にかけて、その程度の煙草のために家族の心象や自分の健康を害するのも馬鹿らしくなった。ここで強調しておきたいのは、煙草は大人のものであって、あまり一方的に禁煙を呼びかけるのもどうかと思う。結局は煙草のために金や他の諸々を注ぎ込めるか、そこら辺を損得で考えられるか、という部分なわけで、そうした思考や葛藤を認めないのでは大人として認めていない。

禁煙や減煙に有効なのは「必ずベランダで吸う」「会社の休憩時間にだけ吸う」「吸う代わりに家族の洗濯物は自分でする」などの条件付けだと言われているが(実践する場合、専門家や医師に要相談のこと)、「煙草は体に悪い」などというのは条件付けではなくただ啓蒙しているだけで、何の得にもならない。どうせなら「あなたが煙草を吸うなら私はこうさせてもらう」と出るのが、大人の対応というものだろう。その良い例が喫煙所を撤廃するなどの公的な措置で、まさに大人は社会と一体ということだった。煙草から社会を見ることも出来るということだろうか。

煙草を止めた身として、これからは「煙草を差し引くだけの楽しみ(ちょっとした息抜き)ってどういうのがあるのだろう」ということを頭の片隅に置いて、生活していくのも良いかもしれない。折角、煙草を吸っていたことがあるのだから。